Keep walking anyway.

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大人子供のカルテ①

「それについて罪悪感さえ感じなければ

              なんの問題もないのよ」

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「大人子供のカルテ①」 佐保里・著

絵が可愛らしくてお手軽に読めるけれど、人の心を衝く言葉にはっとさせられるお話。

 

 仕事帰りに書店で見かけて、なんとなく購入しました。

ほっこりしたテイストで、さらっと読めるけれど結構心に響く言葉が飛び出します。

 

「お年寄りを若返らせるプロジェクト」によって、子供になったお年寄りと、そのプロジェクトを行う若手の医師たちとの交流を描いた作品です。

小学生くらいの子供が、成人した大人に向かって人生のあれこれを説くという、なんとも不思議な構図が面白いです。

幼い子が年寄り臭い口調だとときめいてしまうのはどうしてなんでしょうね?

一種のギャップ萌えなんでしょうか。

 

私が一番好きなのは、口下手で人と関わるのが下手な遠山先生に対して、被験者の野中さんが語るシーンです。

口下手だと患者から頼りないとか失礼だとか言われて怒られることもあるという遠山先生に対して、被験者の野中さんは「そうね、よくわかるわ。でもそれについて罪悪感さえ感じなければ、なんの問題もないのよ」と言うんですね。

「罪悪感があると、ちょっとしたことでも嫌味や非難に聞こえてしまうのよ。そしてそれを受け流せない」と。

 

私も口下手なのでよくわかります。

馴れない人と会話をつなぐのが下手な私は、「落ち着いてるね」とか「しずかだね」「真面目そうだね」とか言われると「一緒にいてもつまらない」と言われているように感じるんですね。

相手は別にそんなつもりで言ったんじゃないんでしょうけど。

それは、私が「会話が続かないこと」に対して罪悪感を感じているからなんだなと、はっとさせられました。

 

そういう風なことが、柔らかくて可愛らしい絵と、ちょうどいい軽い感じで描かれています。

軽すぎず重すぎず。

とてもいい作品だと思います。